2015年1月11日日曜日

親鸞

書名⇒ 親鸞

著者⇒ 吉川英治

出版社⇒ 講談社

分類⇒ 文学(歴史小説)

感想⇒ 久々のブログ更新になりますが、本年もよろしくお願いいたします。
  今回は浄土真宗の開祖・親鸞の半生を描いた巨匠・吉川英治の歴史小説の感想になります。
私は今まで親鸞にはほとんど関心がなかったのですが、本書を読んでその人物像や生きざまに少し興味を持つようになりました。
もちろんそれは吉川英治の描写力によるところが大きいと思いますし、本書に描かれていることは作者の創作によるところも多いと思いますが、権力欲に溺れて堕落していた当時の既成仏教の現状を憂えて、迷妄と苦悩の中にいる民衆の心の救いを真剣に模索していた親鸞のその真摯な生き方には共感しました。

確かに法然や親鸞の思想は虐げられていた下層の民衆を社会体制として現実に救うというところまでいかなかったのであり、単に気休めと諦めの思想でしかないという批判もありますが、社会体制改革の実現が難しかった時代には、気休めや諦めの思想と批判されても、親鸞のような心の救いとしての思想が必要だったのではないかと思えます。
そのような親鸞の純粋な心情と生きざまを、卓越した美文と表現力で描き切った吉川英治の文学には、心を動かされる読後感を持ちました。