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2022年4月9日土曜日

足摺岬 他五編 

 書名⇒ 足摺岬 他五編


著者⇒ 田宮虎彦

出版社⇒ 旺文社

分類⇒ 文学(青春小説)

感想⇒ 久しぶりに読書感想文を書いてみたいと思います。
本書の著者は今まで知らなかったのですが、
戦前から戦後にかけて創作活動を続けていた文学者だそうです。

それで、この著者の作品を初めて読んだのですが、
本作は著者の経験を基にした自伝的小説で、
戦前の思想的に抑圧された時代を背景に、
暗く孤独な学生生活を生きる主人公を通して、
貧しい庶民の心情が心に迫り胸を打たれる内容の作品でした。

そこには、抑圧される貧しい庶民への共感に満ちていて、
左翼思想的なプロレタリア文学に通じるものがありますが、
しかし、本書には思想的な批判精神よりも、
抑圧される貧しい庶民への温かな眼差しが感じられます。

文学的にも、私の個人的嗜好からすれば、最も文学らしい文学だと感じます。












2014年3月24日月曜日

日蝕

書名⇒ 日蝕

著者⇒ 平野啓一郎

出版社⇒  新潮社

分類⇒ 純文学


本書は芥川賞受賞作で、当時学生だった著者がデビュー作でいきなり大きな文学賞を受賞したので話題になった作品です。また、当時の最年少受賞者としても話題になってました。 
そして私は近頃まで知らなかったのですが、この作品には盗作問題が持ち上がり、特にインターネット上では著者への批判的論評も目立っていたようです。更にはその文章に関しても衒学的だと批判されていたようです。
そのように毀誉褒貶 相半ばするようなこの本作なのですが、文学に関して素人の私の感想としては、一読してその文学的表現には驚愕しました。その文章は古い文体で書かれていると共に、難語だらけで高度な文章技術とも言うべき奥深い表現で綴られており、私にとって驚嘆する内容ではありました。
しかも本書は著者がまだ23歳の頃に書かれたものだということです。23歳にしてこれほど高度な文章が書けるとは、しかもこれほどの語彙を知っているとは、と驚いたものです。
近頃の純文学には漢字をあまり使わない軽めの文体の小説が多いようですが、本書は古めかしい文体で難しい漢字を多用した緻密で重厚な作品に仕上がっていて私としては充分読み応えがありました。
このような文章を「知識をひけらかしている」と批判してる人もいますが、これほど緻密で重厚な文章を書けるのも才能だと言えます。また、今はインターネットで難しい漢字や言葉などはすぐ探し出せるから奇をてらって難語だらけの文章にして読者の気を引こうとしたのだろうといった批判もありますが、やはり才能がなければ、いくらネットで検索してもこのような文章は書けないでしょう。
話の内容も中世のヨーロッパを舞台に、哲学やキリスト教神学、当時のカトリックの内情や聖職者の堕落の問題、それに神秘体験などをちりばめた物語で、これもそれらに精通した才能なくしては書けないと思います。
私は盗作されたとされる小説は読んでないですが、明らかな盗作としては問題になってないようなので、話の筋が少し似ている、あるいは扱った題材が似ているという程度ではないかと思います。
私個人としてはこの小説は高度な文学だと言ってよいと思いました。
なお、この小説のカテゴリーは歴史小説・宗教小説・哲学小説・幻想小説などいずれとも決めかねているところなので、単に純文学としておきます。



日蝕・一月物語

日蝕・一月物語