2015年2月28日土曜日

夢野久作全集 8

書名⇒ 夢野久作全集 8

著者⇒ 夢野久作

出版社⇒ 筑摩書房

分類⇒ 文学(心理小説)

感想⇒ 夢野久作は異端文学者として知る人ぞ知る存在で、これまで何作か読んだことがありますが、その真髄がよく解らないでいました。 特に以前に当ブログに書いた『ドグラ・マグラ』は長大な物語であるだけに混沌とした感想しかなく、その真髄というものがよく理解できないでいましたが、今回読んだ本書は、人間の深層心理と狂気を描いたマニアックな文学が、短編によって最も効果的に表現されていて、心惹かれる内容となっています。
例えば『一足お先に』『狂人は笑う』『キチガイ地獄』には饒舌体による1人語りが自在に駆使されていましたし、『冗談に殺す』では人間心理に潜む狂気が、『木魂(すだま)』ではスティーブン・キングにも通じるようなオカルト的な味わいに心をつかまれ、そして『少女地獄』の中の3編(『何んでも無い』『殺人リレー』『火星の女』)に登場してくる少女たちに秘められた心の底にある狂気と脅迫観念による自滅と破局が無残とも異様とも表現できる印象を与えていました。
やはり夢野久作は長編・大作よりも、本書のような短編に最もその才能が遺憾なく発揮されるようで、その物語世界に引き込まれていったものです。
この著者は江戸川乱歩と相通じるような雰囲気があり、それが魅力になっているとも言えます。




夢野久作全集 8

夢野久作全集 8
価格:1,026円(税込、送料別)