著者⇒ 川端康成
出版社⇒ 新潮社
分類⇒ 文学(恋愛小説)
感想⇒ 川端康成の文学を端的に表現するならば、「美しい文学」という言葉に尽きると思います。
そして美しい日本語で紡がれているその文体の特徴は淡々とした文章表現にあり、物語を客観的に淡々と述べてゆくところに、この作家の持ち味があり、それがまた味わい深い文体になっていると言えます。
エンタメ系ではない純文学だから当たり前とは言えますが、大仰な表現や感情を過度に熱くするような書き方ではなく、その淡々とした中に人間関係の機微がうまく表現されていて、文学の名人・達人の技がさりげなく表わされていると感じられます。
本書の短篇集にはさまざまな形の愛の物語が描かれていますが、いずれも美しい文章によって表現されていて、どこまでも美しさの読後感が余韻として残る作品でした。
ただ、こういう正統派の美しい純文学ばかり読んでいると物足りなさを感じてしまいますが、斜に構えたような書き方の作品の合間に読むとひときわ新鮮に感じるものです。
愛する人達 新潮文庫 改版 / 川端康成 【文庫】 |