著者⇒ スティーヴン ・キング
訳者⇒ 浅倉久志
出版社⇒ 新潮社
分類⇒ 文学(サスペンス小説)
感想⇒ スティーヴン・キングは「ホラー小説の帝王」と呼ばれ、その作品はどれもベストセラーになり、映画化もされています。
本書に納められている作品の中では、『刑務所のリタ・ヘイワース』が『ショーシャンクの空に』という題で映画化されていますし、私は知らなかったのですが、本書の表題である『ゴールデンボーイ』も映画化されているということです。
私はスティーヴン・キングの作品は映画の方はいくつか観たことがありますが、原作を読むのはこの作品が初めてです。
映画を観た感想としては、それほど面白いとも思わなかったので、原作の方もあまり期待はしてなかったのですが、本書を読んでみて、その文章力と構成力に感服しました。
内容としては『刑務所のリタ・ヘイワース』は無実の囚人が長い歳月をかけて脱獄する話で、『ゴールデンボーイ』は元ナチ戦犯の老人と少年の交流から、その2人がそれぞれ別々に殺人事件を起こしてゆくというストーリーですが、その緻密な文章と、日常の身近で瑣末な事象をきめ細かく積み上げてゆき、しかも、その中に、結末へと導く伏線を張ってゆくという卓抜な構成力には驚きました。
スティーヴン・キングは単なるホラー作家ではなく、文学的力量もすごいなと感心したものです。
ただ、本書の中で難を言えば、『ゴールデンボーイ』で、老人と少年がそれぞれ別々に浮浪者を殺害してゆく展開について、殺人に到る動機となる心境の過程が描かれておらず、そのため、殺人事件へと展開するストーリーは唐突な感じを受けました。
その点を除けば、文学作品として素晴らしいと思いました。