2010年2月18日木曜日

声に出して活かしたい論語70

書名⇒声に出して活かしたい論語70

編者⇒三戸岡道夫

出版社⇒栄光出版社

分類⇒道徳

感想⇒本書は儒教の祖とされる孔子の言行録『論語』を現代的に解説した本です。

孔子の残した言葉は、その後、弟子達によって編纂されて、現代にまで伝えられ読み継がれてきましたが、なぜ孔子の教えが現代でも読み継がれているのか。それは、論語には人が人として生きるべき道が説かれてあるからだろうと思います。

論語というと、古臭い封建的な思想だとして敬遠される事が多いと思いますが、論語を読んでみると、古臭さを感じません。

特に孔子の思想の中核を成す「仁」及び「忠恕」とは真心と思いやりの事を差し、孔子はこれが最も人間にとって重要な心であり、生き方だと説いています。

この教えは孔子の時代から遥かな時を経た現代においても、最も人間にとって重要な思想であり生き方である事にいささかの違いもないでしょう。

それは古代の時代も、科学が発達した現代においても、変わる事のない人間としての本質であり、人間としての正しい心の在り方と生き方だからであると思います。

時代が変わっても人間の本質と根本的な生きるべき道は変わりようがないと言えますし、変わりようがないからそれが人間の本質だとも言えると思います。

確かに孔子の思想は封建主義社会に利用された面もあるとは思いますが、本質的な部分は封建主義とは無縁だと言えるでしょう。

私は保守主義者や右翼主義者ではありませんが、孔子の思想は、思想的立場に関わりなく人間に必須の思想だと思っています。

今回は堅い内容になってしまいましたが、本書は現代世相に適った良書だと言えます。


 声に出して活かしたい論語70

声に出して活かしたい論語70







2010年2月11日木曜日

死霊

書名⇒死霊

著者⇒埴谷雄高(はにや・ゆたか)

出版社⇒講談社

分類⇒文学(形而上小説)

感想⇒この本は10年以上前にも読んだ事がありますが、その頃は忙しい日々を送っていたのでゆっくり読む暇がなく、覚えたての速読で読み飛ばしてしまい、内容がよく判らないまま読了してしまった事があります。
そのうち読み直してみたいと思っている間に月日が過ぎてしまいましたが、一昨年から再読を始め、
今度は文章を噛みしめるように熟読・精読して、他の本と同時進行でゆっくり読み進め、2年がかりでやっと読み終えました。

今回、熟読・精読したとは言え、それでもよく判らない内容でした。

本書の内容は、共産主義思想の活動家たちの地下活動とその中で交される議論を主たる題材としていて、特に議論の場面で数十ページにもわたる独白を中心とした饒舌なセリフが延々と続くなど、かなりマニアックな小説です。

その議論の中では、「無限大」、「存在」、「宇宙」、「虚体」、「自同律の不快」等々といった深遠かつ壮大な形而上学的思索が繰り広げられていて、この辺りの文章は極めて難解です。
それこそ1行ずつの文章を噛み潰すようにして熟読・精読したのですが、それでもよく判らない内容でした。

そのようによく判らない内容ではありますが、その文章表現には魅了されました。
この濃密で重厚な文体は、文学好きな人にはたまらないだろうと思います。

また、「あっは」とか「ぷふい」といった個性的な笑い声や舌打ちのセリフもなかなか凝っていて面白く感じました。

本書は1976年、日本文学大賞を受賞しています。

なお、この小説は著者のライフワークで、執筆途中で何冊か刊行されていますが、私が読んだ本は1976年版なので、その後の章が入っていません。そのうち完全版を読もうと思っています。

それにしても、ドストエフスキーなどの作品もそうですが、このような重厚な本を読み終えた時というのは、フルマラソンを完走したような気分です。疲れますが、爽快な気持ちでもあります。


 死霊 1

死霊 1



2010年2月5日金曜日

賢い生き方・愚かな生き方

書名⇒賢い生き方・愚かな生き方

著者⇒加藤諦三

出版社⇒三笠書房

分類⇒心理学

感想⇒本書は人間関係における賢い生き方を、心理学の立場から説いた本です。

著者は、他人に気に入られるように自分を抑え我慢をして人付き合いをする人を「愚かな人」とし、他人からの評価を気にせずに自分の生きたいように生きる人を「賢い人」と定義していますが、勿論、著者が論じているような生き方ができればそれに越したことはないに決まっています。

しかし実際の対人関係の中にあっては、著者が論じているほど簡単なものではないというのが実感するところです。他人に左右されずに自分らしく生きるのが最も幸福な生き方であることは判り切ったことですが、それが簡単にできないからこそ苦労をする訳です。

本書では賢い生き方の結論付けはしていますが、そのための具体的な方法論を示唆していないようなので、人生の指針としてはあまり役に立たない内容だと思えました。