著者⇒埴谷雄高(はにや・ゆたか)
出版社⇒講談社
分類⇒文学(形而上小説)
感想⇒この本は10年以上前にも読んだ事がありますが、その頃は忙しい日々を送っていたのでゆっくり読む暇がなく、覚えたての速読で読み飛ばしてしまい、内容がよく判らないまま読了してしまった事があります。
そのうち読み直してみたいと思っている間に月日が過ぎてしまいましたが、一昨年から再読を始め、
今度は文章を噛みしめるように熟読・精読して、他の本と同時進行でゆっくり読み進め、2年がかりでやっと読み終えました。
今回、熟読・精読したとは言え、それでもよく判らない内容でした。
本書の内容は、共産主義思想の活動家たちの地下活動とその中で交される議論を主たる題材としていて、特に議論の場面で数十ページにもわたる独白を中心とした饒舌なセリフが延々と続くなど、かなりマニアックな小説です。
その議論の中では、「無限大」、「存在」、「宇宙」、「虚体」、「自同律の不快」等々といった深遠かつ壮大な形而上学的思索が繰り広げられていて、この辺りの文章は極めて難解です。
それこそ1行ずつの文章を噛み潰すようにして熟読・精読したのですが、それでもよく判らない内容でした。
そのようによく判らない内容ではありますが、その文章表現には魅了されました。
この濃密で重厚な文体は、文学好きな人にはたまらないだろうと思います。
また、「あっは」とか「ぷふい」といった個性的な笑い声や舌打ちのセリフもなかなか凝っていて面白く感じました。
本書は1976年、日本文学大賞を受賞しています。
なお、この小説は著者のライフワークで、執筆途中で何冊か刊行されていますが、私が読んだ本は1976年版なので、その後の章が入っていません。そのうち完全版を読もうと思っています。
それにしても、ドストエフスキーなどの作品もそうですが、このような重厚な本を読み終えた時というのは、フルマラソンを完走したような気分です。疲れますが、爽快な気持ちでもあります。
死霊 1
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