書名⇒ 一寸法師
著者⇒ 江戸川乱歩
出版社⇒ 角川書店
分類⇒ 文学(推理小説)
感想⇒ 私が小学生の頃は、学校の昼休みにはよく図書館に行って本を借りてましたが、その頃よく借りて読んでたのが江戸川乱歩の少年探偵シリーズやコナン・ドイルのホームズ・シリーズ、それにルブランのルパン・シリーズでした。
その中でも特に面白いと思って読んでたのが江戸川乱歩の作品でした。
江戸川乱歩の小説は、同じ探偵小説・推理小説といってもドイルやルブランと違って理知的なトリックや推理よりもおどろおどろとした怪奇趣味の雰囲気に彩られていて、子供の頃はそれが楽しくわくわくして読んでいたものです。
大人になってからも、若い頃は江戸川乱歩の作品に傾倒していた時期があり、殆どの作品は読みました。
その中の1つがこの『一寸法師』です。その後、推理小説・ミステリー小説への興味がなくなって長い間それらの分野の小説を読んでませんでしたが、近頃、久しぶりにこの作品を読み返してみました。
猟奇的なバラバラ殺人に、犯人とおぼしき醜怪な一寸法師のようなこびとの暗躍、そしてそれを追う私立探偵・明智小五郎。これだけ揃うとまさに江戸川乱歩ワールドですね。若い頃はその物語の世界に没頭して妖しい雰囲気を堪能していったものです。
ただ、今回読み返してみると、以前のようには楽しむことはできませんでした。やはりこういう分野に興味が なくなったということが大きいと思いますが、この作品の場合はおどろおどろしさだけで、推理小説の眼目であるトリックに快心のものがないということが挙げられます。
この作品だけに限らず、江戸川乱歩の作品には 推理小説としては駄作あるいは失敗作も多々あるようで、斬新なトリックを目当てにして読むと期待を裏切られることが多いです。
それよりも、江戸川乱歩の作品の場合は、やはりその一種独特の文体とそれによる怪奇趣味の雰囲気こそが魅力となっています。トリックよりもおどろおどろしい雰囲気を楽しむというのが江戸川乱歩の正しい読み方だと言えるのではないかと思います。
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