書名⇒ 影男
著者⇒ 江戸川乱歩
出版社⇒ 春陽堂書店
分類⇒ 文学(推理小説)
感想⇒ 今回も江戸川乱歩の読書感想を書いておきます。今回は『影男』です。
この本を最初に読んだのは小学生の頃で、子供向けに書かれたものでした。
いくつもの偽名を持ち、弱みを持つ富豪を強請って大金をせしめて生きている影男が主人公で、相手を破滅させるまで大金を巻き上げるということはしないし、しかもルパンのように弱者を救ったりもする侠盗みたいなところのある人物なので、犯罪者ではあっても憎めないキャラだと思いましたし、どちらかというと好感をもって読んでいきました。
ただ、後半はその影男が幻想的な仕掛けが設置された地下のパノラマ館みたいなところに入っていって探検していく場面が続くんですが、子供の頃読んだ時はこれがなかなか幻想的な雰囲気で子供心にその不思議な感じにワクワクしながら読んでいったものです。
ですが、大人になってから読んだ時は、話の筋としては何だかバランスが悪いというか、「なぜそこでパノラマ館みたいなところの描写が延々と続くんだ?」という評論家目線での考えが先に浮かびました。まあ、それでもそこの部分はそれはそれで面白かったですが。
このパノラマ館というのは江戸川乱歩にとってかなり興味があったもののようで、他にも『パノラマ島奇談』などの作品にも書いていて、空想の中で遊んでいるという感覚がありましたね。
その幻想的なパノラマ館で探検をしていった影男ですが、最後のところに我らが名探偵・明智小五郎が登場して影男はあっけなく逮捕されてしまいます。名探偵登場といっても、ここで明智探偵が出てくる必要はないように思ってしまいますが。
主人公はあくまでも影男であり、最後まで影男が活躍する内容にしていた方が自然であり、面白かったのではないかと、大人になってからはそういう感想を持ったものです。
まあ、江戸川乱歩の作品にはこういう急展開の内容がよく見受けられますし、それが江戸川乱歩らしさなのかも知れません。
推理小説と銘打たれてはいますが、この小説の面白さは影男が冒険するところとパノラマ館での幻想的な描写だといってよいでしょう。それこそが江戸川乱歩の作品の楽しみ方だと言えます。
そういう意味での乱歩らしさという点で、本作品は面白い作品ではありました。
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