2014年11月11日火曜日

家族シネマ

書名⇒ 家族シネマ

著者⇒ 柳美里

出版社⇒ 講談社

分類⇒ 文学(私小説)

感想⇒ この著者の作品について司馬遼太郎は「研ぎ澄まされた文章」と評価したそうですが、確かにナイフのような鋭さのある文章です。
また、「詩的」とも評されているように、その文章には冗長さがなく、ナイフで切り刻んだような短い文によって表現されていて読み進める度に疾走感が伝わってきます。

そんな文章によって書かれたこの小説は、すでに崩壊している家族がかりそめの幸せな家族をカメラの前で演じるという喜劇とも悲劇ともつかない家族の虚像を炙り出していて、いかにも現代社会を活写した作品だと言えます。

私は本作品をそれなりに評価していますが、 ただ、ネットで本書のレビューを見ると、拒否反応を示す感想が多かったですね。本書は芥川賞を受賞していますが、受賞作としてふさわしくないという意見も書かれてありました。
確かに現代的な軽文学とでも言えそうな軽い感じの小説ですし、また、レビューにもありましたが、著者が演劇をやっていただけに、喧騒に満ちた舞台の芝居のような展開でもあり、このような面に拒否反応を示す人も多いのかもしれません。
それでも私は、村上春樹の『多崎つくる』よりは本書の方が文章表現も優れているし内容も面白いと思ってますので、この作品を評価します。





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