著者⇒ 池田晶子
出版社⇒ 新潮社
分類⇒ 文学(随筆)
感想⇒ 著者の本は『14歳からの哲学』を読んで以来、その切れ味鋭い語り口が面白く、あれから何冊か読んでますが、本書も面白く読めました。
この著者の本が面白いのは、世の中で流行っていることや世間の人々から持て囃されていることに対して無条件に追従するのではなく、懐疑的立場から批評していくところにあります。
それは、「長いものには巻かれよ」という風潮や、自分で考えずに何でも他人の真似をし、世の中の動向に振り回される世間の風潮を、絶妙の文章力と哲学的論理力で批評し斬りまくっている爽快感にあり、そこに共感できるものがあるからです。
確かに世の中は流行を追いかける大衆の動きがあり、
それに乗り遅れないようにしようとする人たちがいて、
更に、それに乗らない人は見下されるような、そんな風潮にあります。
例えば、バレンタインデーにはチョコを贈り、
ホワイトデーにはお返しをするというのも、
菓子メーカーによって作られた流行であり、
大衆がそれに乗せられてしまっている現象ではないかと思いますね。
もちろん世の中の流行が全て悪いものという訳ではないですが、ただ世の大勢に無自覚に従うというのは、
時に愚かな生き方にもなってしまうのではないでしょうか。
ある人々から見れば著者の言ってることはひねくれているように見えるかもしれないですが、
世間で当たり前のこととして扱われていることを、
哲学者として、それらをひっくり返して自分で考える、
そういう生き方考え方を提示しているのが著者なのだと思います。
そういう哲学的論考を展開している本書なのですが、
哲学用語を使わず分かりやすい平易な文章で書かれたこの哲学エッセイは、しかし鋭く本質を暴いて見せています。