2014年5月28日水曜日

にぎやかな天地



書名⇒ にぎやかな天地
著者⇒ 宮本輝
出版社⇒ 講談社
分類⇒ 文学(恋愛小説)
感想⇒ 本書は恋愛小説ではあるんですが、 主人公の聖司が人妻の美佐緒に抱く恋心はあくまでも淡いものであり、相手が人妻ということもあって、決して直接的なものではありません。
その点は現代風の直接的な分かりやすい恋愛小説と違い、夏目漱石の『三四郎』における淡い間接的な恋愛と同じく、言わば奥ゆかしい恋愛小説と言えそうです。
そして、本書では酢造りや詩集の編集に関わる内容や、登場人物たちの複雑な家庭環境によるそれぞれの思いと、その人間関係が、激烈 な事件や過激な描写もなく、ゆったりと淡々と描かれています。
一読してゆくと、何か歯ごたえのない面白みのない小説のように思えますが、読後、じわじわと心の中に滲みてくるようでした。
特に恋愛にしてもストーリー展開にしても、現代風なストレートさがないのが小説として評価できると思いました。
聖司と美佐緒の恋愛も結局成立しないままに終わってしまうのですが、そこが現実的であり、リアルな小説の良さだと感じました。

 にぎやかな天地 上 (講談社文庫)/宮本輝/〔著〕(文庫)

にぎやかな天地 上 (講談社文庫)/宮本輝/〔著〕(文庫)
 にぎやかな天地 下 (講談社文庫)/宮本輝/〔著〕(文庫)

にぎやかな天地 下 (講談社文庫)/宮本輝/〔著〕(文庫)

2014年5月18日日曜日

グロテスク

書名⇒ グロテスク
著者⇒ 桐野夏生
出版社⇒  文藝春秋
分類⇒ 文学(長編小説)
   
感想⇒ 本書は創作ですが、実際にあった東電OL殺人事件とオウム真理教サリン事件を基にしている小説です。
本書の物語 は複数の登場人物たちの視点からそれぞれの転落へと到る人生の過程が語られ、その中に、それぞれの人物たちの心の闇が浮き彫りにされています。
その人物たちの心の闇が陰惨に醜悪に描かれているこの物語の展開は、まさに題名どおりにグロテスクの一語に尽きます。
このような醜悪な内容の小説を書いたのが女流作家だというのも驚きではあります。
人間の心の闇を徹底的に描いた力量がすごいと思います。



グロテスク  /桐野夏生 【単行本】

グロテスク  /桐野夏生 【単行本】



2014年5月11日日曜日

ねじまき鳥クロニクル 3部作

書名⇒ ねじまき鳥クロニクル (第1部 泥棒かささぎ編、第2部 予言する鳥編、第3部 鳥刺し男編)
 
著者⇒ 村上春樹
 
出版社⇒  新潮社
 
分類⇒ 文学(長編小説)
 
 感想⇒ この本は3部作になっているので、3巻まとめて書評を書いておきます。
主人公が種々の不思議な人物たちと関わってゆくという内容の小説なのですが、まず訳が判らないストーリーという印象を受ける作品です。
しかし、それゆえにという べきか、不可思議な印象も受ける小説で、現実的でありながら非現実的な雰囲気にも溢れていて、それが引き込まれてしまう魅力になっているようです。
そして、その登場人物たちにまつわる謎が、この物語の面白さになっていると感じます。まさに村上ワールド全開の 作品と言えます。
ただ、この物語が3巻まであるのは長過ぎるという気もします。第2部の途中まで読んで少しばかり辟易したものです。
物語そのものよりも、作中の人物たちの話が長過ぎるのが難点だとも思います。つまり、この小説の中で、作中の人物たちが語る話はそれぞれ別の小説の物語としても成立するわけで、話の中に別の話が入っているという入れ子型の小説は、どれが主題なのか読み手の側は混乱しますし掴みどころがなくなってしまい、今ひとつ読後感がすっきりしない気がします。
 まあ、そこがこの小説の名状し難い一種不可思議な世界を構築していて魅力ともなっているようです。
現実的な話でありながら非現実的要素が入り込んでおり、シュールレアリスム的な内容の小説であり、そこが本書の面白さではあります。
しかし、その反面、話の内容が とりとめのない印象を受け、訳が判らないまま物語が終わってしまったという感じを受けてしまうものです。
読みはじめの頃は新しい実験性に満ちた新鮮な小説という印象を受けましたが、これが3巻も続くとさすがにうんざりしてくるのは否めません。それが、村上作品に嫌気がさす理由ではないかとも思います。
 
 
 ねじまき鳥クロニクル 第1部

ねじまき鳥クロニクル 第1部
 
 ねじまき鳥クロニクル 第2部

ねじまき鳥クロニクル 第2部
 
 ねじまき鳥クロニクル 第3部

ねじまき鳥クロニクル 第3部
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2014年5月4日日曜日

海辺のカフカ

書名⇒ 海辺のカフカ

著者⇒ 村上春樹
出版社⇒  新潮社
分類⇒ 文学(長編小説)
 感想⇒ 今や世界中から注目され、新刊が発売されると開店前から書店に客が並ぶ人気ぶりで、ノーベル文学賞の最有力候補と目されている著者ですが、ただ、著者の作品は嫌いだとか苦手だという人も少なからずいるようです。
著名人の中にも、爆笑問題の太田光氏や政治評論家の加藤清隆氏などのように途中までは好きだったが、途中から嫌いになったという人もいるようです。
私も数年前にいくつかの村上作品を読んだことがあり、初めて読んだ時はその独特の構成と小説世界に引き込まれて面白いと思ってましたが、続けて何作か読んでいくうちにその独特の書き方に辟易するようになったのは事実です。
私の場合特別に嫌いというところまではいきませんが、特に面白いとか特に好きだとまでも思っていません。
今まで読んだ村上作品の読後感想・書評は読書帳に書き残してますので、そのうちこのブログにも掲載するつもりでいますので、詳しくはその時に書こうと思いますが、今回は初めて読んだ村上作品として『海辺のカフカ』について書いておきます。
まず、この作品を一読して不思議な内容の小説だと思いました。本書では主人公の青年の話と、ナカタ老人の話が交互に別々に進行していますが、一見、この2つの話には接点がなさそうに見えて、話が進行するうちにやがてストーリーの接点が見えてくるようになっています。
現実的な話のようでいて非現実的な話が挟み込まれており、実に不思議な読後感を持ちました。
その不思議な雰囲気を醸し出す独特の文体に引き込まれて魅了されたのは確かです。
また、物語の中の謎の部分が謎のまま残されているところが、読者の想像力を働かせる余地があり、うまい構成だなと感心させられる作品ではありました。
以上が当時(数年前)本書を読んだ時の感想ですが、この頃はまだ初めて読んだ頃なので、村上作品には新鮮な驚きが感じられ、特に大好きというわけではないですが、どちらかというと好きな部類に入れて良い作品だと思っていました。
 このような書き方の小説は1作か2作くらいなら評価できるのですが、こういうのをいくつも読むと飽きもきますし、「もういらない」という思いになるものです。
まあ、この作品は私にとって「いいね!」と評価してよいと思っています。

 海辺のカフカ 上/村上春樹

海辺のカフカ 上/村上春樹


 海辺のカフカ 下/村上春樹

海辺のカフカ 下/村上春樹