書名⇒ にぎやかな天地
著者⇒ 宮本輝
出版社⇒ 講談社
分類⇒ 文学(恋愛小説)
感想⇒ 本書は恋愛小説ではあるんですが、 主人公の聖司が人妻の美佐緒に抱く恋心はあくまでも淡いものであり、相手が人妻ということもあって、決して直接的なものではありません。
その点は現代風の直接的な分かりやすい恋愛小説と違い、夏目漱石の『三四郎』における淡い間接的な恋愛と同じく、言わば奥ゆかしい恋愛小説と言えそうです。
そして、本書では酢造りや詩集の編集に関わる内容や、登場人物たちの複雑な家庭環境によるそれぞれの思いと、その人間関係が、激烈 な事件や過激な描写もなく、ゆったりと淡々と描かれています。
一読してゆくと、何か歯ごたえのない面白みのない小説のように思えますが、読後、じわじわと心の中に滲みてくるようでした。
特に恋愛にしてもストーリー展開にしても、現代風なストレートさがないのが小説として評価できると思いました。
聖司と美佐緒の恋愛も結局成立しないままに終わってしまうのですが、そこが現実的であり、リアルな小説の良さだと感じました。
0 件のコメント:
コメントを投稿