2014年3月24日月曜日

日蝕

書名⇒ 日蝕

著者⇒ 平野啓一郎

出版社⇒  新潮社

分類⇒ 純文学


本書は芥川賞受賞作で、当時学生だった著者がデビュー作でいきなり大きな文学賞を受賞したので話題になった作品です。また、当時の最年少受賞者としても話題になってました。 
そして私は近頃まで知らなかったのですが、この作品には盗作問題が持ち上がり、特にインターネット上では著者への批判的論評も目立っていたようです。更にはその文章に関しても衒学的だと批判されていたようです。
そのように毀誉褒貶 相半ばするようなこの本作なのですが、文学に関して素人の私の感想としては、一読してその文学的表現には驚愕しました。その文章は古い文体で書かれていると共に、難語だらけで高度な文章技術とも言うべき奥深い表現で綴られており、私にとって驚嘆する内容ではありました。
しかも本書は著者がまだ23歳の頃に書かれたものだということです。23歳にしてこれほど高度な文章が書けるとは、しかもこれほどの語彙を知っているとは、と驚いたものです。
近頃の純文学には漢字をあまり使わない軽めの文体の小説が多いようですが、本書は古めかしい文体で難しい漢字を多用した緻密で重厚な作品に仕上がっていて私としては充分読み応えがありました。
このような文章を「知識をひけらかしている」と批判してる人もいますが、これほど緻密で重厚な文章を書けるのも才能だと言えます。また、今はインターネットで難しい漢字や言葉などはすぐ探し出せるから奇をてらって難語だらけの文章にして読者の気を引こうとしたのだろうといった批判もありますが、やはり才能がなければ、いくらネットで検索してもこのような文章は書けないでしょう。
話の内容も中世のヨーロッパを舞台に、哲学やキリスト教神学、当時のカトリックの内情や聖職者の堕落の問題、それに神秘体験などをちりばめた物語で、これもそれらに精通した才能なくしては書けないと思います。
私は盗作されたとされる小説は読んでないですが、明らかな盗作としては問題になってないようなので、話の筋が少し似ている、あるいは扱った題材が似ているという程度ではないかと思います。
私個人としてはこの小説は高度な文学だと言ってよいと思いました。
なお、この小説のカテゴリーは歴史小説・宗教小説・哲学小説・幻想小説などいずれとも決めかねているところなので、単に純文学としておきます。



日蝕・一月物語

日蝕・一月物語









2014年3月6日木曜日

考える日々Ⅱ

書名⇒ 考える日々Ⅱ

著者⇒ 池田晶子

出版社⇒ 毎日新聞社

分類⇒ 哲学

感想⇒ 身近な事から社会問題まで哲学的に考察している内容が面白く、共感しながら読んでました。
社会一般や世間で人気のあるものや支持されているもの、あるいは大きな勢力となっているものに安易に迎合 しないで、自身のスタンスを保っている点が共感できるところです。
例えば、世間にはスポーツ好きは多いようで、「スポーツをしない者やスポーツに関心のない者は変人だ」というような風潮になりがちですが、そういう、大きな勢力になびかない者を見下す風潮に対して辛辣に批判をしている点に共感しました。
また、集団で力を誇示する団体についても、著者は「雑魚(ざこ)は群れる」と批判しています。
数の力 で世の中にのさばる集団に対して、孤高な立場を堅持し、それに誇りを持っている著者に共感しました。



考える日々 2 / 池田晶子  〔単行本〕





  

2014年2月19日水曜日

あんじゅう 三島屋変調百物語事続

書名⇒ あんじゅう 三島屋変調百物語事続

著者⇒ 宮部みゆき

出版社⇒ 中央公論新社

分類⇒ 文学(時代小説)


感想⇒ 変わった趣向の内容で、物語の中に語りの部分の別のストーリーが入るという入れ子の構造になっていて、こういう構造の小説は村上春樹の小説によく見受けられます。
こういう構造の小説は内容が複雑になりストーリーの面白さも増しますが、ストーリーの一貫性が失われやすいという欠点もあるものです。
ただ、この小説は人の心の温かさが伝わってくるほのぼのとしたところや、江戸時代の風情もよく伝わってくるところが心に残る作品でした。


あんじゅう 三島屋変調百物語事続/宮部みゆき

あんじゅう 三島屋変調百物語事続/宮部みゆき




2014年1月23日木曜日

第2図書係補佐

書名⇒ 第2図書係補佐

著者⇒ 又吉直樹

出版社⇒ 幻冬舎

分類⇒ 文学(エッセイ

感想⇒ 本書はお笑いコンビ「ピース」の片割れが書いた書評エッセイ集です。お笑い芸人の中では光浦靖子さんと共に読書家として知られる著者ですが、読書家だけあって文章表現もうまいなと思えます。
ただ、書評エッセイといっても大部分は読んだ本についてではなく、自身の体験を綴った内容が主で、書評は付け足しという感じもしますが、自身について語った部分が面白く、それはそれで楽しめる内容になっています。
それにしても、お笑い芸人にしては(と言っては失礼ですが)、純文学を中心に古典から現代文学まで深く読み込んでいる著者には感心しました。テレビでお笑いの場面を見たことがないのでその芸風が面白いのかどうか判りませんが、大阪出身者にしては厚かましいところもなく控えめで私は好ましい人物だと思ってましたが(人によっては気持ち悪いキャラクターだと言う人もいるようですが)、本書を読んで更に好ましい人物だと思うようになりました。


第2図書係補佐/又吉直樹

第2図書係補佐/又吉直樹




2013年11月27日水曜日

優しいおとな

書名⇒ 優しいおとな

著者⇒ 桐野夏生

出版社⇒ 中央公論新社

分類⇒ 文学(近未来小説

感想⇒人間の心の暗黒面を描いてきた著者が珍しく子供向けの作品を書いたのが本作です。
 近未来の渋谷に生きる孤児のイオンが、さまざまな人間や事件と関わってゆくうちに、人の愛、両親の愛というものを理解してゆくという物語なのですが、少年イオンは1人で路上生活をする子供であったため人の愛というものを信じてなかったのが、モガミ達の愛を、最後のところで理解し受け入れてゆく場面は感動的でしたし、嫌われてもなおイオンに愛を注ぐモガミにも感動しました。読後に救われた気持ちになる1冊です。

 優しいおとな/桐野夏生

優しいおとな/桐野夏生




2013年11月23日土曜日

置かれた場所で咲きなさい

書名⇒ 置かれた場所で咲きなさい

著者⇒ 渡辺和子

出版社⇒  幻冬舎

分類⇒ 文学(エッセイ

感想⇒ この本は去年ベストセラーになり話題になっていましたね。カトリックの聖職者として生きる著者の清心さが伝わってくる内容でした。
宗教的な本の中には高邁過ぎてなじめないものも多いのですが、本書は上から高説を垂れるのではなく、私たちの目線でわかりやすい言葉で書かれてあり、共感するところが多かったですね。
私はキリスト教の信者ではないですが、宗教性は抜きにして心にすんなり入ってくる内容でした。 


置かれた場所で咲きなさい/渡辺和子

置かれた場所で咲きなさい/渡辺和子