2014年4月13日日曜日

滴り落ちる時計たちの波紋

書名⇒ 滴り落ちる時計たちの波紋

著者⇒ 平野啓一郎

出版社⇒  文藝春秋

分類⇒ 文学(短編小説)
 感想⇒ 『日蝕』で緻密で重厚な文章表現をものしていた著者による純文学短篇集です。本書でもその文才あふれる文章表現が随所に見られる作品 でした。しかも本書では実験小説とも言える前衛的な作風にも取り組んでいます。
まず、『閉じ込められた少年』では、文章の進行が途中までは順次に進み、途中を境にして、それまでの話の筋を逆にたどって行く構成になっているという、未だかつて読んだことのない構成になっています。しかもその中盤を境にして逆に進む構成には全く違和感がなく読めるというところには感嘆しました。

『瀕死の午後と波打つ磯の幼い兄弟』ではその中に2つの話があり、その2つの話は全く接点もない別の話なんですが、その2つの話のラストがそれぞれにもう1つの話と比喩的につながっているという構成の妙が際立っていました。

『最後の変身』はカフカの『変身』をモチーフにした一人語りの内容の日記風小説なんですが、この作品の構成は日本の小説の常態である縦書きではなく、横書きの構成になっていました。

 このように本書は新境地としての実験小説にも挑んだ意欲的な短篇集となっていて一読の価値ありと言える内容でした。



 滴り落ちる時計たちの波紋

滴り落ちる時計たちの波紋




 

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