2014年7月12日土曜日

ぼっけえ、きょうてえ

書名⇒ ぼっけえ、きょうてえ

著者⇒ 岩井志麻子

出版社⇒ 角川書店

分類⇒ 文学(ホラー小説)

感想⇒ 本書の著者は以前テレビのワイドショーやバラエティ番組に出ているのを見たことがあり、下ネタばかり言っているキャラクターだったのですが、小説を読んでみるととてもそんな下品キャラとは思えない文章力に驚いたものです。
表題作の題名は岡山の方言で 「とても、怖い」という意味だそうで、娼婦の一人語りに妙味がありました。
ホラーというと、私は怪物や幽霊・妖怪などが出てくる物語が思い浮かびますが、本書の作品には、主人公が主観的に感受する幻視の場面は出てきても、客観的な怪物や霊や妖怪が出てくるわけではなく、主題は生きている人間による殺人や不倫など、現実的な内容が主題になっています。
本書で描かれてある恐怖とは、その現実の人間の所業にこそあるということのようです。
本書に納められてある作品には、どれも人間の業や性(さが)を垣間見せる物悲しさとやるせなさ、切なさがあり、現実の人間の所業と心理にこそ戦慄を感じさせられました。
また、現実と非現実の境目があいまいになる表現技法が秀逸ですね。単にホラー小説というよりも純文学といっても良い読み応えのある小説でした。なお、表題作は第6回日本ホラー小説大賞を受賞しています。




 ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子

ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子

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